1ヶ月、食べる量を減らして、歩く距離も増やした。それで体重計に乗ったら、1キロしか減っていない。あるいは、まったく減っていない。「この調子だと10キロ減るのに10か月かかる」と計算してしまって、続ける気力がしぼんでいく。僕にも、毎朝体重を測っているのに、数字がなかなか動かない時期がありました。あの感じは、よく覚えています。
先に結論を書きます。1ヶ月1キロしか痩せないのは、遅くありません。公的な目安をいくつも並べてみると、月1キロというペースはその幅の中に収まります。焦っているのは、たぶんペースのせいではなく、比べる相手を間違えているせいです。
僕は43歳のときに当時の最高体重を迎え、そこから1年5か月で約12kg(66.8kg → 54.9kg)減らしました。そのあと約2年は60kg前後で過ごせましたが、2025年9月頃からリバウンドし、今は再挑戦している47歳です。健康や栄養の資格は持っていません。ここに書くのは、自分の実データの割り算と、公的機関の資料・研究論文を読んで確かめたことです。
そして、この記事でいちばんお伝えしたいのは、平均の裏側です。月0.7kgという平均は、毎月きれいに0.7kgずつ減った結果ではありませんでした。月の平均で見ると、大きく減ったのは最初の約8か月で、そのあとの約9か月はほとんど動いていません。減っていた途中にも、2〜3か月止まった時期がありました。今まさに「1ヶ月やったのに動かない」と思っている方に、ここを読んでいただきたいと思っています。
読み終わる頃には、今の自分にとって1ヶ月に何キロが現実的なのかを、他人の成功談ではなく自分の体重から計算した目安で判断できるようになっているはずです。

1ヶ月1キロしか痩せないのは、40代以上では遅くありません
1ヶ月に1キロというペースは、公的な機関が示している目安の範囲の中に入っています。「遅い」と決めつける理由が見当たりません。
理由は、目安が1つではないからです。数字はあとの章でくわしく並べます。たとえば日本の診療で置かれる減量目標を体重66.8kgの人に当てはめると、1ヶ月あたり0.33〜0.67kgです。アメリカの機関の目安なら1ヶ月あたり0.56〜1.11kg、イギリスの機関の目安なら1ヶ月あたり2.2〜4.3kgになります。同じ「専門家の目安」でも、ここまで幅があります。月1キロは、この全体の幅の中にあり、アメリカの機関の目安にはそのまま収まります。
では、なぜ「遅い」と感じるのか。比べている相手が、目安ではなく他人の成功談だからです。SNSや広告に出てくるのは「1ヶ月で5キロ」のほうで、「1ヶ月で0.8キロでした」という報告はまず流れてきません。速い数字だけが目に入る場所で自分の1キロを見れば、遅く見えて当然です。
僕の場合も、当時から数字は毎日つけていました。あとで割り算してみたら、1ヶ月あたりの平均はおよそ0.7kgでした。当時の僕は、1ヶ月あたりの平均を出してみたことすらありませんでした。自分のペースが速いのか遅いのかを知らないまま続けていた、というのが正直なところです。それでも1年5か月で、約12kgになりました。
1ヶ月1キロは遅くありません。計算のうえでは、それが12か月続けば12キロです。もちろん、そのとおりに進む保証はどこにもありません(その理由は後の章に書きます)。それでも、問題にすべきはペースの速さではなく、そのペースを何か月続けられるかのほうだと思っています。
僕の平均は1ヶ月およそ0.7kg。でも、毎月0.7kgずつ減ったわけではありません

ここがこの記事の核心です。平均0.7kgという数字は、毎月0.7kgずつ順調に減った結果ではありません。ほとんど動かなかった時期と、動いた時期があって、それをならすと0.7kgになった、というだけの話です。
まず、割り算の中身を出します
数字を先に出します。
- 2022年4月5日:66.8kg(当時の最高体重)
- 2023年9月7日:54.9kg(最低体重)
- 期間:1年5か月(約17か月)
- 減った量:約12kg
- 12 ÷ 17 = 1ヶ月あたり およそ0.7kg(小数点以下は丸めています)
約12kgと聞くと大変そうに見えますが、割り算するとこうなります。なお、54.9kgは目標にしていた数字ではありません。目標体重を決めて、そこに向かって計画的に減らしたわけではないのです。
1ヶ月に何キロ減らすか、僕は決めていませんでした
正直に書きます。僕は「1ヶ月に何キロ減らす」という目標ペースを決めていませんでした。
これは、あとから振り返って良かったと思っている点です。もし「1ヶ月2キロ」と決めていたら、最初の月で達成できずにやめていたと思います。決めていなかったので、達成できたか・できなかったかを毎月採点する機会そのものがありませんでした。
もちろん、目標を決めたほうが動ける人もいます。ここは性格によるところが大きいので、「決めないほうがいい」と勧めるつもりはありません。ただ、目標ペースを決めなくても、体重は12キロ減ることがあるという実例として、正直に書いておきます。
大きく減ったのは最初の約8か月。残りの約9か月は、ほぼ横ばいでした
そして、ここがいちばん書きたかったところです。
朝の体重を月の平均で並べ直すと、減り方はこうでした。
2022年4月の65.4kgから11月の57.1kgまで、最初の約8か月で約8kg減っています。その中でも、5〜6月に約3kg減ったあと、7〜9月は62kg前後で止まり、10〜11月にまた約5kg減りました。
そして2022年12月から2023年9月までの約9か月は、月の平均で56〜59kg台のあいだを行ったり来たりしていました。57kg台から59kg台まで、じわじわ増えた時期もあります。最低の54.9kgが出たのは、最後の2023年9月です。なお、「約12kg」は1日ごとの最高(66.8kg)と最低(54.9kg)の差で、月の平均どうしで比べると約9kgの減少です。
この事実を、さっきの割り算に戻して考えてみてください。1ヶ月あたり0.7kgという数字は、日ごとの最高と最低の差(約12kg)を17か月で割ったものです。ほとんど動かなかった約9か月も、分母に入っています。減っていた最初の約8か月だけで見れば、1ヶ月あたり約1kgになります。
言い換えると、こうなります。平均という数字の裏には、動かない時期が隠れています。きれいに毎月同じだけ減っていくグラフのほうが、めずらしいのではないでしょうか。
「1ヶ月やったのに減らない」は、失敗ではないかもしれません
だから、今この記事を読んでいる方が「1ヶ月やったのに1キロしか減らない」「まったく減っていない」という状態でも、それが失敗を意味するとは限りません。僕の場合も、減っていた約8か月の途中に、2〜3か月ほとんど動かない時期がありました(2022年7〜9月)。
ただし、正直に添えておきます。減量中は食事の記録をつけていなかったので、止まっていた時期に何が違ったのか、なぜまた減り始めたのかは確かめられません。「待っていれば必ずまた動き出す」と言えるだけの材料は、僕にはありません。
何か月やっても何も変わらないなら、続ける根性より、変える中身を1つ探すほうが早いかもしれません。見直す場所は、あとの章にまとめました。
繰り返します。月0.7kgは平均であって、毎月の実績ではありません。平均の裏側には、止まっていた月がいくつもあります。あなたの今月の横ばいも、僕の2022年の夏と同じ場所にいるだけかもしれません。
1ヶ月に何キロ? 公的な目安を並べてみました
減量ペースの「正解」は1つではありません。公的な機関が出している目安と、日本人を対象にした研究の数字を並べると、想像以上にばらついています。
なぜ並べるのかというと、目安を1つだけ見ると「自分は遅い」「自分は速すぎる」と誤解しやすいからです。いくつも並べれば、幅の中のどこにいるかが分かります。
以下は、僕が減量を始めたときの体重66.8kgに当てはめて換算した数字です。ご自身の体重に置き換えて読んでみてください。
- 日本:肥満症の初期の減量目標=現体重の3%以上。66.8kgなら約2.0kg。健康科学大学の発表によると、これは3〜6か月で達成する想定とされています → 1ヶ月あたり0.33〜0.67kg
- 日本:1年で5%。日本人576名を5年間追跡した研究(Yamakageら 2024年)では、1年後に5%の減量が心血管のリスク因子の改善と結びつくラインとして報告されています。66.8kgなら約3.3kg → 1ヶ月あたり約0.28kg
- アメリカ:6か月で開始体重の5〜10%。アメリカ国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所(NIDDK)の資料に書かれている目安です。66.8kgなら3.3〜6.7kg → 1ヶ月あたり0.56〜1.11kg
- イギリス:週に0.5〜1kg。イギリスの国民保健サービス(NHS)が安全なペースとして示している数字です → 1ヶ月あたり約2.2〜4.3kg
いちばん緩やかな目安といちばん速い目安では、1ヶ月あたりで15倍ほどの開きがあります。「専門家が言う正しいペース」という言い方ができないことが、これで分かると思います。
そのうえで、僕の月0.7kgがどこに位置するかを見ると、日本の診療で置かれる目標ペースは満たしていて、NIDDKの目安の中にも入っています。NHSの目安よりは緩やかです。遅いのではなく、じっくり型だったというのが正確なところだと思います。
今の体重だと、月に何kg?(体重別の目安・60〜90kg)
上に並べた目安を、今の体重に当てはめた数字です。3%は3〜6か月の合計目標なので、月あたりに直した数字も添えました。月1%と月2%は、NIDDKの「6か月で5〜10%」(月あたり約0.8〜1.7%)に近い、切りのいい幅です。公的な目安そのものではありません。
- 60kgの方:3%は1.8kg(3〜6か月で。月あたり0.3〜0.6kg)/月1%なら0.6kg/月2%なら1.2kg
- 70kgの方:3%は2.1kg(3〜6か月で。月あたり0.35〜0.7kg)/月1%なら0.7kg/月2%なら1.4kg
- 80kgの方:3%は2.4kg(3〜6か月で。月あたり0.4〜0.8kg)/月1%なら0.8kg/月2%なら1.6kg
- 90kgの方:3%は2.7kg(3〜6か月で。月あたり0.45〜0.9kg)/月1%なら0.9kg/月2%なら1.8kg
「1ヶ月1kg」は、どの体重でも月1〜2%の範囲に入るので、遅くはありません。
ここで正直に書いておきたいこと
大事な注意を2つ添えます。
1つ目。上に挙げた%の目標は、「肥満症」と診断された方の治療目標です。すべての人のノルマではありません。健康診断で何も指摘されていない方が、この数字を義務のように受け取る必要はありません。
2つ目は、僕自身のことです。身長164cmで換算すると、66.8kgのときのBMI(体格の指数)は約24.8でした。日本の基準で「肥満」とされるのはBMI25以上なので、僕は最高体重のときでも、その基準でいえば肥満症ではありませんでした。54.9kgのときは約20.4です。
つまり、この記事に出てくる3%という数字は、僕の目標だったわけではありません。「自分の月0.7kgは、世の中の目安と比べてどのあたりなのか」を確かめるための物差しとして使っているだけです。ここを混同すると誤解を招くので、はっきり書いておきます。
どれを自分の目安にすればいいのか
正直に言えば、僕には「これを選ぶべきです」と言う資格はありません。ただ、選び方の考え方なら書けます。
目安は「達成できたかどうかで自分を採点する道具」ではなく、「焦っているときに現在地を確かめる物差し」として使うのがいいと思っています。1ヶ月で1キロ減った月に「NHSの目安に届いていない」と落ち込むのは、物差しの使い方としてもったいないと思います。同じ1キロが、日本の目標ペースの上限に近い数字でもあるからです。
目安は複数ある。だから、自分を測る物差しは1本に絞らない。これが、この章でお伝えしたいことです。
「1日240kcal減らせば1ヶ月1kg」の計算どおりには減りません
「脂肪1kgは約7200kcalだから、1日240kcal減らせば1ヶ月で1kg減る」という計算は、そのとおりには進みません。この計算を信じていると、うまくいっていないのに「自分の努力が足りない」と誤解してしまいます。
理由は、体重が減ると、体が消費するカロリーも一緒に減っていくからです。同じ食事を続けていても、体が軽くなるほど1日に使うカロリーは少なくなります。だから最初のうちのペースが、そのまま続くことはありません。
この点を数字で示した研究があります。2011年にHallらがThe Lancetに発表した論文です。ここで検証されているのは、従来から使われてきた「3500kcal=1ポンド」という計算のルールです。日本でよく見る「7200kcal=1kg」と同じ考え方にあたります。この論文では、そのルールが体重の減り方を約100%、つまり2倍ほど過大に見積もると指摘されています。
さらに、この論文では体重の反応の遅さについても報告されています。食事や活動を変えても、その効果が体重に現れきるまでには時間がかかります。変化の半分に達するまでにおよそ1年、最大の減量の95%に達するまでにおよそ3年かかる、という試算です。
これを読んだとき、僕は少し救われました。「1ヶ月やって1kgしか減らない」のは、計算を間違えているのではなく、そもそも計算のほうが速すぎたということです。
ですから、こんな経験にも説明がつきます。
- 最初の1〜2か月はスルスル減ったのに、3か月目から鈍った
- 同じ食事・同じ運動を続けているのに、以前ほど減らない
- アプリの「このペースなら◯月に目標達成」という予測に、まったく届かない
どれも、努力が足りないから起きたこととは限りません。体重が減った分だけ、消費するカロリーも減っているという、体の側の反応です。
なお、「脂肪1kg=7200kcal」という数字については、僕は元になった一次資料を見つけられませんでした。よく見かける数字ですが、根拠として強く持ち出すのはやめておきます。
計算どおりに減らないのは普通のことです。予測が外れたときに責めるべきは、自分ではなく計算式のほうかもしれません。
体重が減り始めたあとに止まる「停滞期」は、失敗のサインではありません
減り始めたあとに体重が止まる時期、いわゆる停滞期は、やり方が間違っていた印とは限りません。減量が進むほど、同じ食事でも減りにくくなる仕組みが体の側にあるからです。
前の章で、体重が減ると消費するカロリーも減ることを書きました。NIDDKも、食べる量を減らすと体はその赤字を埋めるように反応し、減り方は鈍ると説明しています。ただ、理由はもう1つあります。食欲です。
2018年にHallとKahanが発表した総説があります。それによると、体重が1kg減るごとに1日の消費は20〜30kcalほど下がります。一方で食欲は、1日100kcalほど増えるとされています。「最初に速く減り、数か月で止まる」経過は典型的だ、とも書かれています。
著者らは、体重が止まる理由として、代謝の低下より食欲の変化のほうが大きく関わる可能性が高い、としています。同じつもりで食べていても、体の仕組みとして食べる量が少しずつ戻り、赤字が縮んでいきます。意志が弱いから起きることではなく、体の側の反応だと説明されています。
前半に書いたとおり、記録を見返すと、僕にも減り始めたあとで止まった時期がありました(2022年7〜9月)。当時の僕の感覚は「停滞期はあったと思うけれど、全体が右肩下がりなので気にしなかった」というものでした。
「必ず来る」「◯週間で抜ける」といった数字は、確かめられる資料がなかったので書きません。
体重は「毎日の値」ではなく「週平均」で見る
止まったと判断する前に、体重の見方を1つ変えてみてください。毎日の値ではなく、週の平均で見る方法です。
イギリスのNHSも、12週間の減量プランの中で週1回の計測を勧めています。理由は、体重が日ごとに上下し、毎日の値では本当の減り方が分からないからです。
では毎日測るのと週1で測るのとでは、どちらがよいのか。研究は両方あるので、毎日測るか週1かの決め方にケース別の選び方をまとめました。
体重計の数字を動かすのは、体の水分、塩分、筋肉や肝臓にためた糖(グリコーゲン)、便の量です。
2017年にBhutaniらが、普通に生活している成人46名を2週間追った研究があります。体重変化は平均0.26kg、標準偏差(ばらつきの大きさ)は1.2kgでした。短期の変化の84%は脂肪以外の部分だった、と報告されています。1kg前後のブレは、脂肪の増減とは限りません。
週1回だけ測るか、毎日測るなら7日分の平均で比べると、脂肪の増減が見えやすくなります。くわしい仕組みと体重計の読み方は、「体重計の数字が水分で動く仕組み」に書いています。
1ヶ月やっても減らないときに見直す5つ
数か月続けても何も変わらないとき、変える中身をどこから探すか。探す場所を5つに絞りました。
①食べた量の把握のずれ。「食べていないのに減らない」と感じたら、まずここです。1992年のLichtmanらの研究では、そう訴えた10名が実際の量より平均47%少なく申告していた、と報告されています。日本人140名を調べたOkuboらの2008年の研究でも、44%が実際より少なめに申告していました。意志の弱さではなく、誰にでも起こりやすいずれです。1週間だけ量って記録すると、ずれが見えます。
②運動だけで食事を変えていない。8試験1,022名をまとめたJohnsらの2014年の解析があります。食事と運動を組み合わせると、運動だけより12〜18か月で約6.3kg多く減った、と報告されています。有酸素運動だけだと12か月で約1.7kgでも、腹囲は約2cm減り、血圧や脂質には利点がありました(Thorogoodら 2011年)。数字を動かすのは主に食事なので、運動はやめず、食事の記録を1つ足すのが近道です。
③たんぱく質不足。24試験1,063名をまとめたWycherleyらの2012年の解析があります。同じカロリーでも高たんぱくのほうが、脂肪以外の減りが0.43kg少なかった、という結果が報告されています。体重の差は0.79kgと小さく、著者らも控えめな利点と書いています。たんぱく質を増やせば痩せるのではなく、減る分を脂肪に寄せるための手当てです。
④便秘・むくみ・水分。体重計には出ますが、脂肪ではありません。健康長寿ネットによると、むくみは皮膚の下に余分な水分がたまった状態です。塩分の摂りすぎや長時間の同じ姿勢、過労などで起こります。便は1日あたり中央値128gという報告があります(Roseら 2015年)。数日たまれば数百g単位で体重計に乗ります。急に体重が増えてむくみが進み、息切れも出ている場合は、緊急を要する病気の可能性があると健康長寿ネットは注意しています。迷わず受診してください。
⑤睡眠。寝れば痩せる、という話ではありません。2010年のNedeltchevaらの研究では、平均41歳の10名を、寝床にいる時間5.5時間と8.5時間で比べています。5.5時間のときは脂肪の減少が55%少なく、脂肪以外の減少が60%多くなっていました。減った体重の合計はほぼ同じで、数字ではなく中身が変わる話です。10名の小さな研究です。寝不足と食欲や間食の関係は、「寝不足で体重が増える仕組み」に書いています。
体調に不安がある場合は、医師にご相談ください。
速く落とすとどうなるのか、研究が言っていること
速く落とすことの本当の論点は、リバウンドのしやすさではありません。ここは、よく見かける説明と結論が違うので、丁寧に書きます。
「ゆっくり落とすほうがリバウンドしにくい」は、研究では支持されていません
ダイエットの記事でいちばんよく見る説明が、これだと思います。「急いで落とすと戻る。ゆっくり落とせば戻らない」。
正直に書きます。僕は今でも、この説を信じています。 じっくり落としたほうが体に無理がないし、そのほうが戻りにくいはずだ、と感覚では思っている。
ですが、この記事を書くために調べたら、この説を検証した研究では、そこに差は見つかりませんでした。 自分の感覚と食い違う結果なので、隠さずに書きます。
2014年にPurcellらがThe Lancet Diabetes & Endocrinologyに発表した研究があります。204人を、速く落とすグループと緩やかに落とすグループに分けて、3年間追いかけたものです。結果はこうでした。
- この試験の目標だった「体重の12.5%以上の減量」を達成できた人の割合は、速いグループで81%、緩やかなグループで50%
- 3年後には、減らした体重の約71%が戻っていた。これはどちらのグループも同じで、差がなかった
もう1つあります。2010年にNackersらが発表した研究では、50〜75歳の肥満女性262人を対象に、最初の減り方の速さで分けて比べています。最初に速く減ったグループは6か月で13.5kg減、18か月後も10.9kg減を保っていました。ゆっくり減ったグループは、それぞれ5.1kg減、3.7kg減です。速いグループのほうが戻りやすい、という結果にはなりませんでした。
念のため書いておきます。これは「速く落としたほうがいい」という話ではありません。「ゆっくりならリバウンドしない」とは言えない、という話です。もしそう書いてある記事を読んで安心していたなら、その安心の根拠は思ったより弱いかもしれません。
では、速さの本当の論点は何か
論点は、リバウンド率ではなく、体の中で何が減るかと、続けられるかのほうにあります。
まず、体組成の話です。2019年にSeimonらがJAMA Network Openに発表した研究(TEMPO Diet試験)があります。45〜65歳の閉経後で肥満のある女性101人を、厳しくカロリーを制限するグループと緩やかに制限するグループに分けて、12か月比べたものです。
- 厳しい制限のグループは、緩やかなグループより体重も脂肪も約2倍多く減った
- 一方で、除脂肪量(脂肪以外の体の重さ。筋肉や水分などを含む)の減少も約1.5倍大きかった
- ただし、その減り方は減った体重に比例した範囲で、握力には差がなかった
- 股関節の骨密度の低下は、約2.5倍大きかった
ここは正確に読む必要があります。「速く落とすと筋肉が落ちる」と単純化されがちですが、この研究では握力に差は出ていません。一方で、骨密度の差ははっきり出ています。40代以降、骨は減らしたくないものの1つです。
除脂肪量については、別の総説も参考になります。2017年にCavaらがAdvances in Nutritionに発表したものです。太っている人が減量した場合、減った体重のうち除脂肪量が占める割合はおよそ20〜30%とされています。つまり、減った分の7〜8割は脂肪です。対策としては、十分な(ただし摂りすぎない)たんぱく質と、筋肉に負荷をかける運動が挙げられています。たんぱく質をどのくらい摂ればいいかは「PFCバランスの決め方」に書いています。
もう1つ、体調面の注意があります。先ほどのNIDDKの資料には、「非常に急速に体重を減らすと、胆石ができる可能性が高まる」と書かれていました。急ぐことには、こうした側面もあるわけです。
僕が「じっくり型でよかった」と思う理由
僕の月0.7kgは、目安の中では緩やかなほうでした。結果としては、それでよかったと思っています。
ただし理由は、「ゆっくりだからリバウンドしなかった」ではありません。そのペースだったから、17か月続けられたというだけです。実際、僕はそのあとリバウンドしています。じっくり落としたからといって、戻らないわけではないことは、僕自身が証明してしまいました。その経緯は「12kg痩せたのに、なぜリバウンド?」に書いています。
だから僕は、速く落とす人を「間違っている」とは思いません。自分が何か月続けられるペースなのか。分かれ目は、そこだけだったように思えてなりません。
速さの論点は、戻りやすさではなく、骨や体組成への負担と、続けられるかどうか。そう置き換えて考えると、自分に合うペースを選びやすくなります。
「40代は代謝が落ちるから減らない」は、正確ではないようです
「40代になると基礎代謝が落ちるから痩せにくい」という説明は、今の研究とかみ合っていません。ここも、通説を書き写すわけにはいかない場所です。
理由は、大規模な測定研究の結果があるからです。2021年にPontzerらがScience誌に発表した論文があります。生後8日から95歳までの人を対象に、二重標識水法(水に印をつけて、体が実際に使ったエネルギーを精密に測る方法)で1日のエネルギー消費量を調べたものです。
報告されているのは、次のような内容です。
- 体格を調整した1日の総エネルギー消費量と基礎代謝、そして除脂肪量は、20歳から60歳までほぼ横ばいだった
- 60歳を過ぎると、調整後の総消費量は年に約0.7%ずつ低下していた
- 低下が始まる変化点は63.0歳(95%信頼区間 60.1〜65.9歳)と算出された
つまり、40代でエネルギー消費が急に落ちるという結果にはなっていません。
では、なぜ40代を過ぎると減りにくく感じるのか。ここは断定できないので、可能性として書きます。落ちているのは代謝そのものよりも、動く量・筋肉量・生活のほうかもしれません。仕事が忙しくなって歩く距離が減る、疲れて運動をやめる、寝る時間が遅くなる。20代の頃と違うのは、そちらではないでしょうか。
一度リバウンドした僕自身は、その原因をこう考えています。年齢のせいもあるけれど、いちばんの要因は自分の不摂生だった。 アルバイトを増やして帰宅が遅くなり、朝の筋トレが消え、同じ頃に食事管理アプリも解約した。減っていたのは代謝ではなく、続けていた行動のほうでした。その話は「疲れてダイエットが続かない40代以降へ」に詳しく書いています。
これは自分を責めている、という意味ではありません。原因が生活の側にあるなら、そこは手を入れられるという意味です。
「40代だから」を理由にすると、打つ手がなくなります。年齢は変えられませんが、動く量と生活の条件なら、少しは動かせます。そちらを疑うほうが前に進めると、僕は考えています。
では、何を目標にすればいいのか

目標を「1ヶ月に何キロ」で置かないほうが、僕には合っていました。代わりに置くものを3つ書きます。1つ目は公的な目安から考えた提案で、2つ目と3つ目は今の僕が実際にやっていることです。どれも、誰にでも当てはまる正解ではありません。
1. 最初の目標は「今の体重の3%」に置いてみる
キロ数ではなく、割合で置く方法です。今の体重の3%を計算してみてください。70kgなら2.1kg、80kgなら2.4kgです。
なぜ3%かというと、日本人を対象とした研究で、3%程度の減量から健康の指標に改善がみられたと報告されているからです(Muramotoら 2014年)。この研究は、日本肥満学会のガイドラインの中核概念をまとめた論文の中で、根拠として引用されています。日本の肥満症診療では、この3%以上を3〜6か月で目指す形で最初の目標が置かれます。
ここでも同じ断りを繰り返します。これは肥満症と診断された方の治療目標であって、すべての人のノルマではありません。僕自身、最高体重のときでもBMIは約24.8で、その基準には当たりませんでした。あくまで「最初の一歩をどのくらいに置くか」の参考として紹介しています。
それでも僕がこの置き方をすすめたい理由は、達成できる大きさだからです。「10キロ痩せる」は遠すぎて、1ヶ月目の1キロが小さく見えてしまいます。「まず2キロ」なら、1ヶ月目の1キロは折り返し地点です。同じ1キロなのに、見え方が変わります。
「まず2キロ」と決めたあと、その重さを脂肪1kg=約7,200kcalで1日の数字に分解する手順は、目標をカロリーと1日あたりに分解する手順の記事に書いています。計算どおりには進まない点だけは、この記事で書いたとおりです。
2. 体重以外の変化も、目標の中に入れておく
体重だけを見ていると、体が変わっているのに「減っていない」と判断してしまうことがあります。
僕の直近の体験を書きます。最近また筋トレを再開しました。日曜以外の朝、職場のジムで30分です。その1ヶ月で、体重は減るどころか約1kg増えました。
家庭用の体組成計の数値では、体脂肪はあまり変わらず、筋肉量の表示が約500g増えていました。ただし、家庭用の体組成計の「筋肉量」は体の水分量の影響を受けるので、この500gが本当に筋肉だと断定はできません。あくまで「機械の表示ではこう出た」という事実です。
このとき、僕に焦りはありませんでした。「必要な過程だ」と考えていて、むしろやる気が上がったくらいです。体重計の数字だけを目標にしていたら、この1ヶ月は「失敗した1ヶ月」になっていたはずです。筋トレ再開後に体重が増えることについては、「筋トレ1ヶ月で体重が増えた理由と40代からの見分け方」に詳しく書きました。
体重以外に見ておくと役に立つのは、こんなところです。
- ベルトの穴の位置、ズボンのウエストのゆとり
- ウエスト・腹囲(メジャーで測ると、穴の位置より細かく分かります。NHSの減量プランでも、体重と一緒に毎週記録する項目です)
- 体脂肪率(家庭用の体組成計は水分で動くので、日々の値ではなく傾向だけを見ます)
- 階段を上がったときの息の切れ方
- 健康診断の数値(次の健診まで待つ必要がありますが、客観的に確かめられる指標です)
健診で腹囲が85cmを超えていた場合に、その数字をどう受け止めて何から減らしていくかは、健診の腹囲が基準値を超えたときの考え方として別の記事に書きました。
腹囲は少し動いたのに、へその横をつまむと厚いままという方は、つまめる皮下脂肪がいつ落ちるかを減量の量で見る話も参考にしてください。
3. 記録を残しておく(あとで割り算するために)
3つ目は、記録です。ここは強くおすすめします。
というのも、この記事の「月0.7kg」という数字自体、記録があったから出せたものだからです。当時の僕は、自分のペースが速いのか遅いのかを知りませんでした。毎日の数字が残っていたから、あとになって割り算ができました。
そして月の平均で並べ直して初めて、大きく減ったのは最初の約8か月で、残りはほぼ横ばいだったことも見えました。記録がなければ、「なんとなく減った1年半」で終わっていたはずです。
僕は今、体重を朝起きてトイレの後に測り、自分で作ったPFC管理アプリに食事を記録しています。市販のアプリでも、ノートでもかまいません。大事なのは形式ではなく、疲れた日でも1分で終わる形にしてあるかです。アプリの話は「PFC管理アプリ」の記事に書いています。
これから記録を始める方は、何をどれだけ食べているかを把握する手順を「カロリー管理の始め方」にまとめてありますので、そちらから読んでみてください。
1ヶ月ごとに一喜一憂しないために、僕がいちばん役に立ったと感じているのが記録です。3か月分、6か月分をまとめて眺めると、1ヶ月では見えなかった線が見えてきます。
まとめ/こんなときは相談を
- 1ヶ月1キロは遅くない。公的な目安を並べると、月1キロはその幅の中に収まっている
- 目安は1つではない。66.8kg換算で、日本の肥満症の初期目標なら月0.33〜0.67kg、NIDDKなら月0.56〜1.11kg、NHSなら月2.2〜4.3kg
- 紹介した%の目標は、肥満症と診断された方の治療目標であって、すべての人のノルマではない
- 僕の実データは1年5か月で約12kg、平均すると1ヶ月およそ0.7kg。ただし大きく減ったのは最初の約8か月で、残りの約9か月はほぼ横ばいだった。平均は均等な進み方を意味しない
- 「1日240kcal減らせば月1kg」の計算どおりには減らない。体重が減ると消費カロリーも減るため(Hallら 2011年)
- 「ゆっくり落とすほうがリバウンドしにくい」は、研究では支持されていない(Purcellら 2014年/Nackersら 2010年)
- 速さの論点はリバウンド率ではなく、骨密度・体組成・胆石などの負担と、続けられるかどうか
- 「40代は代謝が落ちるから」は正確ではない。体格あたりのエネルギー消費は20〜60歳でほぼ横ばいと報告されている(Pontzerら 2021年)
今日の一歩は、減量が必要だと感じている方なら、今の体重に0.03をかけて、その数字を最初の目標に置いてみることです。70kgなら2.1kg。それが1ヶ月で達成できなくても、2か月かかっても、3か月かかっても、目安の範囲の中にいます。
最後に、体重の変化について注意していただきたいことを書きます。
- ダイエットをしていないのに体重が減っていく
- 食事や運動を変えていないのに、急に体重が動いた
- 極端に食事を減らしても、まったく体重が動かない
- 強い疲れ、動悸、手の震え、むくみなど、体重以外の変化も一緒に出ている
こうした場合は、体重の増減の背景に、対処が必要な状態が隠れていることがあります。自己流の減量を続ける前に、医療機関にご相談ください。僕は資格を持たない一般の40代なので、そこから先は専門家の領域です。
また、極端な食事制限や絶食で数字を動かすことは、この記事ではおすすめしません。体重の数字に強く縛られてつらさを感じている場合も、専門家に相談していただきたいと思っています。
よくある質問
Q. 1ヶ月に1キロは遅いですか?
A. 遅いとは言えません。体重66.8kgの人に当てはめると、日本の肥満症診療で置かれる初期目標は1ヶ月あたり0.33〜0.67kg、アメリカのNIDDKの目安は0.56〜1.11kgです。月1キロは、NIDDKの目安にそのまま収まり、日本の初期目標のペースも上回っています。ただし目安は複数あり、イギリスのNHSは週0.5〜1kg(月2.2〜4.3kg)を示しています。減り方には個人差があるので、数字を絶対視しないでください。
Q. 1ヶ月やったのに、まったく減りません。やり方が間違っていますか?
A. すぐに間違いだと決めつける必要はありません。僕自身、減っていた途中の2022年7〜9月は、月の平均で62kg前後のまま、2〜3か月ほとんど動いていません。ただ、数か月続けて何も変わらないなら、続ける根性より変える中身を1つ探すほうが早いかもしれません。体調に不安がある場合や、極端に減らしても動かない場合は、医師にご相談ください。見直す場所は、本文の「1ヶ月やっても減らないときに見直す5つ」にまとめました。
Q. 月0.7kgだと、5kg落とすのに何か月かかりますか?
A. 単純な割り算では、5÷0.7で約7か月です。ただし、均等には減りません。僕の場合も、大きく減ったのは最初の約8か月で、その途中にも2〜3か月止まった時期がありました。7か月はあくまで目安で、前後にずれるのが普通です。SNSで見かける「1ヶ月5kg」と比べると遅く感じるかもしれません。ただ、そうした数字は開始時の体重や食事の減らし方など、条件が自分と同じとは限りません。比べるなら、他人の成功談より先月の自分の平均のほうが役に立ちます。
Q. ゆっくり落としたほうが、リバウンドしにくいのでは?
A. その説は、研究では支持されていません。204人を3年追跡した研究(Purcellら 2014年)では、速く落としたグループも緩やかに落としたグループも、3年後に戻った体重の割合は約71%で、差がありませんでした。速さで気にしたほうがよいのは、リバウンド率よりも骨密度や体組成への影響、胆石のリスク、そして自分が続けられるかどうかだと考えています。
Q. 40代は代謝が落ちているから、若い頃より減りにくいですよね?
A. そうとは言い切れません。生後8日から95歳までを対象にした研究(Pontzerら 2021年)では、体格を調整したエネルギー消費量は20歳から60歳までほぼ横ばいで、低下の変化点は63.0歳と報告されています。落ちているのは代謝そのものよりも、動く量や生活のほうかもしれません。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。今月の数字が思ったより小さくても、それだけで良し悪しは決まりません。まずは今の体重に0.03をかけた数字を、最初の目標として書き出してみてください。僕もまだ途中にいます。一緒に続けていきましょう。
参考にした情報
- NHS(英国国民保健サービス)「Overweight and obesity in adults」
- NIDDK(米国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所)「Dieting & Gallstones」
- Ogawa W ほか(2024年・Endocrine Journal)日本の肥満症診療ガイドラインの定義・基準・中核概念
- 健康科学大学 プレスリリース(2024年3月29日)肥満症の減量目標について
- Yamakage H ほか(2024年・Frontiers in Endocrinology)日本人576名・5年追跡の減量率と心血管リスク
- Hall KD ほか(2011年・The Lancet)エネルギー収支と体重変化の定量化
- Purcell K ほか(2014年・The Lancet Diabetes & Endocrinology)減量速度と長期の体重管理の無作為化比較試験
- Nackers LM ほか(2010年・International Journal of Behavioral Medicine)初期の減量速度と長期成績
- Seimon RV ほか(2019年・JAMA Network Open)TEMPO Diet 無作為化比較試験
- Cava E ほか(2017年・Advances in Nutrition)減量中の筋肉の維持
- Pontzer H ほか(2021年・Science)生涯にわたる1日のエネルギー消費量
- NIDDK(米国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所)「NIH Body Weight Planner」
- Hall KD, Kahan S(2018年・Medical Clinics of North America)減量後の維持と肥満の長期管理
- NHS(英国国民保健サービス)「Losing weight – Getting started, Week 6」(12週減量プラン)
- Bhutani S ほか(2017年・Physiological Reports)自由な生活下での2週間の体重変化の内訳
- Lichtman SW ほか(1992年・The New England Journal of Medicine)食事量の過小申告と身体活動の過大申告
- Okubo H ほか(2008年・European Journal of Clinical Nutrition)日本人成人における食事申告量の過小評価
- Johns DJ ほか(2014年・Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics)食事+運動と単独介入の減量効果の比較
- Thorogood A ほか(2011年・The American Journal of Medicine)有酸素運動単独の減量効果のメタ解析
- Wycherley TP ほか(2012年・The American Journal of Clinical Nutrition)高たんぱく食の減量効果のメタ解析
- 健康長寿ネット「浮腫」(公益財団法人長寿科学振興財団)
- Rose C ほか(2015年・Critical Reviews in Environmental Science and Technology)ヒトの排泄物の量と特性
- Nedeltcheva AV ほか(2010年・Annals of Internal Medicine)睡眠不足が減量の中身に与える影響
※この記事は、運営者個人の体験と一般的に知られている情報をもとにまとめたものです。効果や感じ方には個人差があり、特定の効果を保証するものではありません。持病のある方・体調に不安のある方は、実践の前に医師などの専門家にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。
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