カロリー計算がめんどくさい。食事の記録が続かない。記録しようと決めたのに、気づけばアプリを開かなくなっている。自分の意志が弱いせいだと感じていませんか。
先に結論を書きます。研究を読むかぎり、記録で効いていたのは「細かさ」ではなく「途切れないこと」のようです。だとすれば、続かないときの選択肢は「完璧にやる」か「全部やめる」かの二択ではありません。詳しさを落とす、という手が残っています。
僕は1978年生まれの47歳です。2022年4月に66.8kg(身長164cm)からダイエットを始め、1年5か月で12kg減らしました。その後リバウンドし、いまは再挑戦中の一般人で、健康や栄養の資格は持っていません。そして僕自身、有料の食事管理アプリを解約したあと、1年以上まったく記録しない期間を過ごしました。
40代からのダイエットは、仕事も家のことも忙しいなかで進めることになります。時間と気力が限られているぶん、「続く形」を選べるかどうかが分かれ目になります。
この記事を読み終えるころには、「めんどくさい」の正体が3つに分かれて見えるようになります。そのうちどれを削れば自分は続けられそうか、見当がつくはずです。
アプリを解約した話そのものは、リバウンドを振り返った記事と、自作アプリを紹介した記事でも触れました。この記事で書くのは、そのとき何が億劫だったのかと、やめたあとに空いた1年以上のほうです。

「カロリー計算がめんどくさい」の正体は、3つに分けられる
記録が続かないのは、根性の問題ではありません。つまずく場所が、具体的に3か所あるからです。
僕が有料の食事管理アプリをやめたとき、面倒だと感じていたのは次の3つでした。
- 食べたものを検索して探すのが面倒
- 量(グラム数)を入れるのが面倒
- 外食や、人からもらったもののときに困る
ひとまとめに「入力が面倒」と言ってしまうと、打つ手が「がんばる」しかなくなります。3つに分けると、どれか1つだけ削るという選択ができます。
その1:食べたものを探すのが面倒
最初の壁は、食品を探す作業です。
アプリの検索窓に食べたものの名前を打ち込むと、似た名前の候補がずらりと並びます。どれが自分の食べたものに一番近いのか、その判断を1品ごとに求められます。1食で3品、4品と食べれば、その判断も3回、4回と増えていきます。
食事記録アプリの使われ方を調べた研究があります。Cordeiro 2015(国際学会CHIで発表)は、141人へのアンケートと、記録アプリのフォーラムに投稿された5,526件の書き込みを分析したものです。この報告でも、食品データベースから正しい項目を探す手間が、記録をやめる理由としてくり返し挙げられていました。
つまり、探すのが面倒なのは、あなただけに起きていることではありません。
その2:量(グラム数)を入れるのが面倒
3つのうち、僕が一番きつかったのはここです。
きつかった理由は2つあります。
1つは、量る作業そのものの手間です。「今食べたご飯は何グラムか」は、量らないかぎり分かりません。まじめにやろうとすれば、キッチンスケールを出して、盛りつける前に器ごと量ることになります。1回なら何ということもない作業です。
もう1つが、その回数です。食べたものを探すのは、慣れれば早くなります。ところが量は、1品ごとに必ずついてきます。1食で3品食べれば3回、1日3食なら1日9回。1回あたりは軽くても、毎日積み上がると効いてきます。
3つの面倒のなかで、手間の総量が一番大きかったのがここでした。
先ほどのCordeiro 2015でも、量の見積もりは大きな負担として報告されています。特に、複数の材料が混ざった料理や、自分で作った料理の分量をどう入れるかが難所として挙げられていました。
その3:外食や、人からもらったもののときに困る
3つ目は、自分で作っていないものを食べたときです。
外食のメニューには、材料の量が書かれていません。人からいただいたお菓子も同じです。そこで記録が止まります。
僕はこういうとき、AIに聞いて調べてもらっていました。ただし、AIが出す数値は目安であって、正確とは限りません。同じ料理でも店によって量も味つけも違います。数字を「正解」として受け取らないことが前提になります。
Cordeiro 2015には、この行き詰まりのあとに何が起きるかも書かれています。1食入れられない日があると記録全体の精度が落ちたと感じ、そのまま記録そのものをやめてしまうという声です。
僕もこの3つを面倒だと感じたまま、記録は最終的にゼロになりました。
僕は食事記録を全部やめて、1年以上ゼロだった
僕は記録を「減らす」のではなく、まるごとゼロにしました。
きっかけは、有料の食事管理アプリの解約です。およそ1年使っていたアプリでした。やめた理由は2つあります。1つは、月々の支払いを見直すサブスクの整理でした。もう1つが、細かく記録するのが億劫になっていたことです。上に書いた3つの面倒が、そのまま解約の後押しになりました。
ここで大事なのは、解約したあとに僕が何もしなかったことです。メモ帳に書くことも、無料アプリを入れ直すこともしませんでした。 食事の記録は完全に消え、その空白は1年以上続きました。
その1年以上のあいだに甘いものがほぼ毎日になった経緯は、食事記録をやめたあとに何が先に消えたかを研究と並べた記事に書きました。
同じ時期、生活のほうも崩れていきました。アルバイトを1つ増やして疲れがたまりました。朝起きられなくなり、毎朝の筋トレも止まりました。それまで我慢できていた甘いものやスナック菓子を、疲れた日に食べるようになりました。この時期に何が起きていたかは「疲れていた時期に続けられたこと」の記事にも書いています。
そのなかで、1つだけ残ったものがあります。体重を測ってアプリに入れる、約1分の作業です。これだけは疲れていても続きました。
結果として、55.2kgまで落とした体重は、過去最高だった66.8kgを更新するところまで戻りました。
念のため書いておきます。記録をやめたから戻った、と断定はできません。 睡眠時間、疲労、筋トレの中断、食べる量。同じ時期に複数のことが同時に動いていました。原因を4つに分けて考えた話は「12kg痩せたのに、なぜリバウンド?」にまとめてあります。
ただ、1つだけ言えることがあります。「カロリー計算をやめたら楽になった」という体験談は、検索するとたくさん出てきます。その先に何が起きたかまで書いてある記事は、あまり見かけません。僕はその1年以上の先を、自分の体重の記録として持っています。
食事記録が続いた人が守っていたのは「細かさ」ではなかった
記録を調べた研究をいくつも読んで、意外だったことがあります。効いていたのは、記録の詳しさではなさそうだという点です。
Peterson 2014は、220人を12か月追跡し、食事記録の「詳しさ」と体重の変化の関係を調べた報告です。結果は、記録の詳しさは体重の変化と統計的な関連が見られなかったというものでした。一方で関連が示されたのは、記録した頻度と、続けた一貫性のほうでした。
かかる時間についての報告もあります。Harvey 2019によると、記録に使う時間は1か月目の1日あたり平均23.2分から、6か月目には14.6分まで短くなっていました。慣れるほど、記録にかかる時間は短くなっていったということです。さらにこの研究では、減量がうまくいった人といかなかった人で、記録にかけた時間に差はなかったと報告されています。差が出たのは、アプリを開いた回数のほうでした。
頻度の目安を示した研究もあります。Arroyo 2024は、平均年齢50.7歳の参加者を対象にした報告です。40代以上の読者の方と、年齢が近いデータです。ここでは、記録が週1〜2日にとどまった人では体重が増え、週3〜4日では横ばい、週5日以上で減少という傾向が示されました。研究者は「維持のためには少なくとも週3日、ただし週5〜6日ならより大きい効果が期待できるかもしれない」とまとめています。毎日でなくてよい、と読める結果です。
ただし、ここは正直に書きます。この分野をまとめたBurke 2011のレビューでは、研究者自身が「全体として証拠の質は強くない」と述べています。記録の方法を比べた研究は数が限られ、比べ方もそろっていません。ですから上の数字も、「こうすれば必ずうまくいく」という保証ではなく、傾向を示す手がかりとして読んでください。
それでも、「細かさより頻度」という方向は、複数の報告で共通していました。完璧に1日書くより、雑でも週の半分以上を埋めるほうが、研究の示す形に近いということになります。
なお、「カロリー計算をやめたほうが痩せる」という説も探してみました。これを支持する研究(専門家の審査を通ったもの)は、僕には見つけられませんでした。 体験談としては多く見かけますが、研究として確かめられたものは見当たらなかった、というのが正直なところです。
全部やめる前に試せる、4つの選択肢

続かないとき、やめる前に試せることが4つあります。どれも「記録を減らす」方向の工夫です。
選択肢1:詳しさを落とす
全部の食事を細かく書くのをやめて、対象を絞る方法です。
Nezami 2022は、「高カロリーの食品だけを記録するグループ」と「通常どおりカロリーを記録するグループ」を比べた研究です。6か月後の減量に、統計的な差は見られませんでした。 Patel 2022も、簡略化した記録と詳細な記録を比べて、3か月後の体重の減り方に差を見つけていません。さらにPatel 2022では、記録できた日の割合が簡略版で97%、詳細版で49%と報告されています。書く量を減らしたほうが、続いたということです。
ただし、どちらも参加者が数十人規模の小さな試験です。「簡単にしても同じ効果がある」と言い切れる段階ではなく、有望な選択肢として報告されている、という受け取り方が正確だと思います。
対象を絞る形はいろいろ考えられます。夕食だけ、間食だけ、たんぱく質だけ。自分が一番崩れやすい場所を1つ選ぶのが現実的でしょう。
選択肢2:回数を落とす
毎日を目指すのをやめる方法です。Arroyo 2024の結果に沿えば、週3日以上でも意味がありそうだ、と読めます。平日だけ、あるいは週の半分。「今日は書けなかった」で全体をやめてしまうより、翌日また開けるほうが形として残ります。
選択肢3:入力の手間そのものを削る
僕がやったのはこれです。自作のPFC管理アプリ(PFC=たんぱく質・脂質・炭水化物)によく食べるものを登録しておき、ワンタップで入力できるようにしました。
ただし、正直に書きます。これで解消したのは3つのうち「探す面倒」だけです。グラム数の入力も、外食のときの困りごとも、いまも残ったままです。市販のアプリにも「よく食べるもの」を登録する機能はたいてい付いていますので、まずはそこを使うのが早いと思います。
選択肢4:外食のときはAIに聞く
僕は外食や人からもらったもののとき、AIに聞いて調べてもらっていました。手が止まる場所を、聞ける相手に肩代わりしてもらう形です。
くり返しになりますが、AIが出す数値は目安で、正確とは限りません。店や作り方で実際の量は変わります。持病があって食事の管理が治療に関わる方は、AIやアプリの数値で自己判断せず、主治医や管理栄養士にご相談ください。
いまの僕は、面倒なまま入れています

いまの僕の記録は、きれいではありません。
グラム数の入力も、外食のときの対応も、面倒なままです。それでも、気にせずに入れています。目分量で「たぶんこのくらい」と入れて、次に進む。合っているかどうかは、もう追いかけていません。
やっているのは、精度を捨てて継続を取る、という形です。Peterson 2014の「詳しさは体重の変化と関連が見られなかった」という結果と、ちょうど重なることになりました。
記録を再開できたきっかけも、根性ではありません。今年に入ってエージェント型のAI(指示すると自分で手順を考えて作業を進めてくれるAI)が登場し、アプリを自分で簡単に作れるようになったからです。変わったのは僕の意志ではなく、道具のほうでした。
まとめ
- 記録が続かないのは根性の問題ではなく、探す・量を入れる・外食で困るという3か所の壁があるからです
- 僕は有料アプリの解約を機に記録を全部やめ、1年以上ゼロでした。その後、体重は過去最高を更新するところまで戻りました(同時期に疲労・筋トレ中断も重なっており、記録だけが原因とは言えません)
- 研究では、効いていたのは詳しさではなく頻度と一貫性でした。ただしBurke 2011は「証拠の質は強くない」とも述べています
- 全部やめる前に、詳しさを落とす・回数を落とす・入力の手間を削る・AIに聞くという選択肢があります
- 何をどう記録するかの基本は「カロリー管理の始め方」にまとめてあります
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。記録が続かなかった日のことを、責める材料にしないでください。壁のある場所は決まっていて、そこは削ってよい場所です。
あなたが一番めんどくさいのは、①探す ②量 ③外食のどれでしょうか。そこを1つ楽にするだけで、記録は途切れにくくなるかもしれません。
※この記事は、運営者個人の体験と一般的に知られている情報をもとにまとめたものです。効果や感じ方には個人差があり、特定の効果を保証するものではありません。持病のある方・体調に不安のある方は、実践の前に医師などの専門家にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。
参考にした情報
- Self-Monitoring in Weight Loss: A Systematic Review of the Literature(Burke 2011)
- Barriers and Negative Nudges: Exploring Challenges in Food Journaling(Cordeiro 2015)
- Dietary Self-Monitoring and Long-Term Success with Weight Management(Peterson 2014)
- Identification of Minimum Thresholds for Dietary Self-Monitoring to Promote Weight Loss-Maintenance(Arroyo 2024)
- Log often, lose more: Electronic dietary self-monitoring for weight loss(Harvey 2019)
- A pilot randomized trial of simplified versus standard calorie dietary self-monitoring in a mobile weight loss intervention(Nezami 2022)
- Detailed Versus Simplified Dietary Self-monitoring in a Digital Weight Loss Intervention Among Racial and Ethnic Minority Adults(Patel 2022)





